紙を扇形に切り、二本のまっすぐな辺を合わせると、先のとがった形ができます。円錐の展開図として見慣れた形ですが、「端をつないだから底の縁は円になる」と言うだけでは、少し説明が足りません。輪になった線は、円とは限らないからです。
ここでは、厚みがなく、伸び縮みしない理想的な紙を考えます。扇形の二本の半径を、重ね代なしでぴったり合わせ、底面が円で、頂点がその中心の真上にある直円錐の側面へ巻く場合です。底をふさぐ円の紙は別に必要です。
元の半径は、円錐の高さではない
半円の「半径」と「弧」を追う
展開前:半円
巻いた後:直円錐の側面
- 実線・同じ印の L
- 扇形の半径 → 円錐の母線
- 破線の縁
- 弧の長さ πL → 底面の円周 2πr
πL = 2πr なので r = L/2
扇形の中心は円錐の頂点に、弧は底面の縁になります。中心から弧へ引いた半径は、頂点から底面の縁へ斜めに伸びる線になります。この線を母線と呼びます。
したがって、扇形の半径を L とすると、円錐の母線の長さも L です。円錐の高さは、頂点から底面へ垂直に下ろした長さなので、母線とは違います。
もう一つ残るのが、弧の長さです。紙を伸ばさず、弧を一周ぶんの底面の縁へ対応させるなら、扇形の弧の長さと底面の円周は等しくなります。
半円なら、底面の半径は半分
高さと母線は、別の辺
L は斜辺
h と r が直角をはさみます。
L² = h² + r²
- 母線 L
- 10 cm
- 底面の半径 r
- 5 cm
- 高さ h
- 5√3 cm ≈ 8.66 cm
扇形が、半径 L の半円だったとしましょう。その弧は元の円周の半分です。巻いた円錐の底面の円周も、半径 L の円周の半分になります。円周は半径に比例するので、底面の半径は L の半分です。
半径10 cmの半円なら、できる直円錐の母線は10 cm、底面の半径は5 cmです。高さは10 cmではありません。頂点、底面の中心、底面の縁を結ぶ断面に直角三角形ができるので、三平方の定理から高さは 5√3 cm、約8.66 cmと求められます。
その直円錐へ、紙を伸ばさず巻けるのか
ここまでは、直円錐になったと仮定したときの長さの計算でした。次に、その形へ巻く対応そのものを考えます。
扇形の中心から同じ距離 s のところに、弧を何本も描いてみます。小さな弧も大きな弧も、円一周に対して同じ割合の角度を占めています。半円なら、どの弧も半径 s の円周の半分です。
そこで、それぞれの弧を半径 s/2 の円に対応させます。その円を、頂点から斜めに s だけ離れた位置へ並べます。半径と高さの割合を一定にすれば、円の集まりは直円錐の側面になります。同じ角度の方向にあった点は、同じ一本の母線上に並びます。
この対応では、中心から外へ進む長さも、各弧に沿って進む長さも保てます。付録では、斜め方向も含めた紙の上の細かな長さが保たれることを確かめます。「輪になるから円だ」と決めるのでなく、円になるような対応を具体的に作っているのです。
扇形を広くすると、円錐はどう変わる?
元の円一周に対して扇形が占める割合を k と書きます。半円なら k = 1/2 です。母線を L、底面の半径を r、高さを h とすると、関係は次の二つにまとまります。
r = kL
h = L√(1 − k²)
同じ半径の紙なら、扇形を広くするほど弧が長くなり、底面の円は大きくなります。母線の長さは変わらないので、その分、高さは低くなります。
中心角が120度、180度、270度の三枚を、どれも半径12 cmで用意したら、底面の半径はどうなるでしょうか。
| 中心角 | 一周に占める割合 k | 底面の半径 |
|---|---|---|
| 120度 | 1/3 | 4 cm |
| 180度 | 1/2 | 6 cm |
| 270度 | 3/4 | 9 cm |
高さは120度のものが最も高く、270度のものが最も低くなります。「使う紙の角度が大きいほど、高い帽子になる」とは限りません。
ここで考えた角度は、0度より大きく360度より小さい範囲です。360度まで広げると式の上では高さが0になり、立ち上がった円錐ではなくなります。
実際の紙には厚みや折れ目があり、辺を合わせただけでどんな場合も同じ形に落ち着くとは限りません。今回示したのは、理想的な扇形を直円錐の側面へ巻く構成と、そのときの寸法です。展開図を見るときには、「どの線がどこへ移り、どの長さが保たれるか」を追うと、式の意味まで見えてきます。
付録:対応を式で確かめる
ここからは三角関数と微分を使った検証です。本文の長さの対応だけ知りたい場合は、ここで区切って読めます。
中心角 θ はラジアンで表し、0 < θ < 2π、k = θ/(2π) とします。紙の上の点を、中心からの距離 s と角度 φ で表します。範囲は 0 ≤ s ≤ L、0 ≤ φ ≤ θ です。
頂点を原点とし、次の対応を作ります。
x = ks cos(φ/k)
y = ks sin(φ/k)
z = s√(1 − k²)
s が一定の点は、半径 ks、高さ s√(1 − k²) の円になります。φ が0からθまで動くと、φ/k は0から2πまで動くので一周します。両端 φ = 0 と φ = θ は同じ位置に来ます。φ が一定なら、原点から伸びる直線なので母線になります。
さらに、この対応を F とすると、s > 0 のところでは次が成り立ちます。
|∂F/∂s|² = k² + (1 − k²) = 1
|∂F/∂φ|² = s²
(∂F/∂s)・(∂F/∂φ) = 0
したがって、細かな長さの二乗を表す線素は、平面の極座標と同じ ds² + s²dφ² です。これで、紙を局所的に伸び縮みさせない対応だと分かります。頂点は極座標が特別になる点なので、この微分の計算は頂点を除いて行っています。
保たれるのは、対応する紙上の経路に沿って測る長さです。紙を曲げる前後で、離れた二点を空間の直線で結んだ距離まで同じになる、という意味ではありません。